最後のお願い

3

モヤモヤとした気分のまま授業を受ける。
1時間目の中盤ぐらいの頃だった。
突如、学年主任の先生が私のクラスに現れた。
そして私が呼び出された。
先生は酷く慌てた様子だった。
何事かと思って尋ねてみると、やけに深刻な顔で「落ち着いて聞いてください」と言ってきた。

結論から言うと、妹が事故に遭って危篤状態にあるとのことだった。
彼氏と一緒にバイクに乗って高校へ向かう途中、電柱にぶつかってしまったらしい。
スピードを出し過ぎた末の自損事故だとか。
妹は彼氏と共に全身を強く打ち、重傷を負った。
すぐに救急車によって病院に搬送されたが、彼氏の方はほぼ即死だった。
妹も……私と両親が病院に着いた頃には既に息を引き取っていた。
その右の手首には、私から奪い取った黒水晶のブレスレットが嵌められたままだった。

『お願い！　一生のお願い！　これちょうだい！』

今朝聞かされたそれは、彼女にとって最後のお願いとなった。