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「大変だったね」
「うん」
「なんていうか、人生って何があるか分からないもんだね」
「うん」
妹が妹の彼氏と共に事故死してから一週間が経った。
葬式だとか役所の手続きだとかも落ち着いて、私はようやく元の生活に戻った。
友人とこうやってお昼ご飯を食べるのも一週間ぶりだ。
「ねえ、大丈夫?」
あからさまに顔色の悪い私を心配して友人がポンと肩を叩く。
私は縋るような思いで胸に抱えていた想いを吐き出した。
「あのさ」
「ん?」
「もしかしたら……」
「どうしたの?」
「妹が死んだのは私のせいなんじゃないかって」
「何でそう思うの?」
「私、あの日の朝、黒水晶のブレスレットを妹に取られたのよ。
ムカついて、思わず『妹に天罰が下ればいいのに』って願っちゃった。
その直後にあの事故が起こったの。だから……」
まさかの形で願いが叶えられてしまったのではないか、と私はあの日以来怯えていた。
悪い呪術に手を染めてしまったような気がしていたのだ。
すると、友人が私の背中を優しくさすってくれた。
「あのねえ、あんな石に人の願いを叶える力なんてあるわけないでしょ」
「でも……」
「考えてもみなよ。本当にそんな効果があったら、
世の中、色んな人の欲望でめちゃくちゃになってるよ」
「ああ、まあ確かに」
「でしょ? だから、全ては偶然。
事故はバイクのブレーキが壊れてたから起こったんだよ。
いわば、バイクの持ち主であるあの男の責任なの。
アンタが気に病むことなんて何も無いんだよ」
「……そっか。なるほど、ありがとう。お陰で少し気が楽になった」
「それは良かった」
ようやく笑うことができた私を見て、友人も微笑んでくれた。
彼女がなぜ、バイクのブレーキが壊れていたことを知っていたのか……
それについては今後一生、触れないでおこうと思う。
(終)
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良い子のみんなは、人のものを奪い取ってはいけないよ⭐︎
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