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白と黒の王子様
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
息切れをしながら屋上の扉を開けると、やはりそこに彼女はいなかった。
僕は彼女の好きだったオレンジの夕焼けを、黒い目で追うように見上げる。
ピコン。
「……?」
突然通知音が鳴った。
彼女からのメールだった。
どういうことだろう。
時差で届いた、ということだろうか。
メールには『大好きな白と黒の王子様へ』とだけ。
そこに映る僕と彼女の写真。
うまく笑えていない僕と、満面の笑みでピースする、彼女が映っていた。
いつもなら、色は見えないはず……なのに。
「……なんで」
涙に濡れる視界の中で、はっきりと映るその色は。
母のくれた世界が消えたと同時に。
写真の中で笑う、時間の止まった彼女は、やはり死んでしまったのだと夕焼け空が告げた。
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