異変

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異変

そういうと、彼女はくるりと僕の方を向いて言った。 「じゃあ、明日にしましょ!」 「明日? 急だね」 「そう! 明日は……多分なにもないから!」 ニコっと笑う彼女に、僕は混乱する。 「でもこういうのって、段階を踏んでからやるもんじゃないの……?」 「まぁ、なんとかなるわよ! やりましょ!」 こうなってしまっては、もうきっと後戻りはできないんだろう。 「あぁ、うん……」 「じゃあ、また明日ね!」 「うん、また」 僕らは手を振って、その日は別れを告げた。  次の日。 屋上に来ると、彼女はいなかった。 細かく降る「白」に体温を奪われて気づく。 「あぁ、今日は雪か」 彼女の好きな夕焼けは、今日は見れないんだな。 空を見上げながら、僕は彼女を待ち続ける。 「遅いな……」 携帯を開いて時間を見てみる。 時刻は16時。 もう2時間経つ。 そろそろ来てもいいはずだ。 その時、電話が鳴った。 彼女からだった。 「ごめん、今日手術の日だった!」 「……え?」 僕は少し混乱した。 でも、帰ってきてくれると信じて。 「……じゃあ、君が終わるまで待ってるよ」 「あいあいさー!」 彼女は高い声でそう言った。 そういえば、前からこんなテンションだったな。 彼女は電話越しに続ける。 「ねー、王子様! あの約束! この白いお城から連れ出してくれるって約束! 日にちズレても、絶対に叶えてよね」 「あぁ、約束する 絶対約束する」 君を連れ出すって、もう決めたから。 「じゃあ、次会うときはまたいつもの屋上で!」 「うん、また僕は白い夕日にあたって待っとくよ」 そう言って僕らの電話は切れた。 寒い手をこすりながらはぁ~と息を吐く。 真っ暗な空に映る白が不安になってくるけど。 「……約束、ね」 彼女が帰ってくるか、少し不安だった。 それでも、僕は信じて待ち続けた。 ……だが、その日、彼女は来なかった。
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