序幕.尊巫女

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序幕.尊巫女

 ――これは常世(とこよ)何処(どこ)かに存在すると伝えられてきた、(いにしえ)(ことわり)が息づく別世のお(はなし)。  そこに生きる人族の民は、八百万(やおよろず)の神々を崇め、(あやかし)(おそ)れる暮らしと共に()った。  その中でも、彼らを(まつ)り、鎮める(やしろ)(つかさど)る一族に生まれ、特異な能を持つ人族の女は『尊巫女(みことみこ)』と呼ばれる。  彼女達は、十八になると神々の住む神界に向かうという契約が、遥か昔からあった。雨()ぶ巫女は龍神界、陽をもたらす巫女は稲荷界へ行き、彼らの神力を借りる梯子(はしご)と成るのが生まれながらの役目、責務である。  神族と人族の混血である、その地を()べる其々(それぞれ)(おさ)に認められれば、子孫繁栄の為の伴侶となる。否な場合は贄となり、その地の一族に喰われて力を吸収されるという、至極、酷な慣わし……因習だった。  ――全てを諦め、搾取される事を存在意義に生きていた女は、  放置という名の歪な自由と思慮を得て、自身を知った。  ――全てを嫌悪し、忌み嫌われる力を虚しく感じていた厄神は、  少しずつ息を吹き返す花に安らぎを得て、情愛を知った。  『再生』と『破壊』――両極の能持つ異種の二人が歪に出逢い、恋におちた先は……
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