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「お前も大変やな…」
ユウジの顔をこんなにしっかり見るのも久しぶりの様な気がした。
「いやあ、兄貴の方が大変やろう…。何回も関西と九州の往復…」
私はタバコを灰皿で消して、小さく頷いた。
「これだけ往復すると慣れるモンやな…」
そう言うと二人で笑った。
強い風が吹き、塀の外の桜の木から一気に花びらが舞い落ちる。
そして、私の車の上にその花びらがシャワーの様に落ちて来た。
「車…。ドット柄になってんな…」
ユウジはタバコを持った手で私の車を差した。
「ああ、明日は洗車やな…」
私は少し肌寒く感じ、上着のボタンを閉めた。
「そう言えば、兄貴って桜、嫌いとか言ってなかったか…」
「ああ、あんまり好きじゃないな…」
私は無意識に胸のポケットに手を入れて二本目のタバコを咥えた。
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