場面七 溶け合う

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 突き上げられるような快感に、有朋は叫び声を上げて達した。背後で、慎吾が小さく呻き、慌てて身を引く気配がかすかにした。  中に出せばいいのに。  荒い息を吐きながら、褥に身体を沈めた有朋は思う。その背を、一拍おいて慎吾がぎゅっと抱きしめた。しばし、互いの息遣いだけが夜に溶ける。 「………抜けんかち、思うた」  肩に口付けを落としながら、苦笑混じりの声で慎吾は言う。 「あんまい、絞っで」 「………抜かんでもよかろう」  小さく言うと、微かに笑う気配がした。よいしょ、と、慎吾が前に回る。寄り添うように身体を合わせ、唇を重ねる。情交の余波のように侵入してきた舌を、軽く絡めあう。身の内に慎吾がいた感覚がふと甦って、少し胸がじくと疼く。  ………暖かい。  少し息が整い、疲労と幸福感に深い息を吐き出す。が、満ち足りた気分なのはどうやら自分だけであるらしい。 「………のう」 「ん」 「もっかいええが?」 「………」  この男は。  風呂場を合わせれば二回目なのにまだ満足しないのかと苦笑しつつ、「ちいとだけ待て」と言って目を閉じる。慎吾は苦笑しつつ、手探りで浴衣と毛布を引き寄せ、有朋の背にかけた。 「この間は、そいで寝てしもうたがじゃ」  そういえば確かにと思いつつ―――有朋は情事の後に特有の少しばかり甘えた気分でかけられた毛布を引き上げる。 「………起こせばよかろう」 「寝とっもんば起こしてまですっ気はなか」  遠慮する柄かと一瞬思ったが、確かに、こういう事にかけては慎重すぎるほどに慎重に、恋人の身体を気遣う男ではある。判ったからもう少しだけと、有朋は優しい幸福感に酔う。
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