魔王様は春がお嫌い!

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魔王様は春がお嫌い!

『次のニュースです』  魔王城のリビング。  テレビでは、アナウンサーがにこやかな笑顔でニュースを伝えている。 『桜の開花予想ですが、気象庁によると今年は早いとのことで、九州では既に……』 「ぐぬぬぬぬぬ」  美しい女性アナウンサーを、まるで親の仇のように睨みすえているのは――屈強な体格の我らが魔王様である。  新しく魔王軍の部下として入った僕は、きょとんとするしかない。魔王様、一体何をそんなに不機嫌になっているのだろうか? 「先輩、先輩!」  僕は近くを通りがかった魔王軍の先輩にこっそり声をかける。 「魔王様は、何であんなにご機嫌斜めなんですか?あのアナウンサーさんが嫌いなんですか?」 「いんや」 「じゃあ、ひょっとして桜が嫌い?あんなに綺麗なのに」  僕の言葉に先輩は、“あー、ある意味正解かも”と遠い目をした。 「桜が咲く咲かないって話になるころになあ、アレが襲来するもんだから。魔王様は桜を見ると、アレのサインだと思ってものすごく機嫌が悪くなるんだ」 「アレって?」 「世にも恐ろしいものだ。魔王軍最大の敵と言っても過言ではない。魔王城で働く俺達兵隊も、なんなら勇者の連中さえアレを恐れているんだ」 「ええええ」  なんだその恐ろしいものは!僕は震えあがったのだった。  魔王様も勇者も恐れる大敵。桜が咲く頃にやってくるものとは、一体なんなのだろう?
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