1人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王様は春がお嫌い!
『次のニュースです』
魔王城のリビング。
テレビでは、アナウンサーがにこやかな笑顔でニュースを伝えている。
『桜の開花予想ですが、気象庁によると今年は早いとのことで、九州では既に……』
「ぐぬぬぬぬぬ」
美しい女性アナウンサーを、まるで親の仇のように睨みすえているのは――屈強な体格の我らが魔王様である。
新しく魔王軍の部下として入った僕は、きょとんとするしかない。魔王様、一体何をそんなに不機嫌になっているのだろうか?
「先輩、先輩!」
僕は近くを通りがかった魔王軍の先輩にこっそり声をかける。
「魔王様は、何であんなにご機嫌斜めなんですか?あのアナウンサーさんが嫌いなんですか?」
「いんや」
「じゃあ、ひょっとして桜が嫌い?あんなに綺麗なのに」
僕の言葉に先輩は、“あー、ある意味正解かも”と遠い目をした。
「桜が咲く咲かないって話になるころになあ、アレが襲来するもんだから。魔王様は桜を見ると、アレのサインだと思ってものすごく機嫌が悪くなるんだ」
「アレって?」
「世にも恐ろしいものだ。魔王軍最大の敵と言っても過言ではない。魔王城で働く俺達兵隊も、なんなら勇者の連中さえアレを恐れているんだ」
「ええええ」
なんだその恐ろしいものは!僕は震えあがったのだった。
魔王様も勇者も恐れる大敵。桜が咲く頃にやってくるものとは、一体なんなのだろう?
最初のコメントを投稿しよう!