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表にまわり、小屋の入り口に立つ祈祷師に声をかける。
「あの、えっと……」
「あぁびっくりした。なんだい」
嗄れ声が答えて、振り返った。多朗と同じくらいの背丈の、小柄な老婆だった。
「あの……実は、これ、そこに……」
「うん? ……なんだい、これは。……卵……かい?」
「笹爺は……そこに住んでた爺さんは、そのう……人魚の卵だって……」
笑い飛ばされると思った。もしくは、村の大人たちのように鼻であしらわれると。――そして、そうなればいいのにと思っていた。
だが、祈祷師は険しい顔になってその殻を一つ、手にとった。
「……あたしも本物を見るのは初めてだよ……これが、人魚の……」
その合点したような顔に、多朗の胃のあたりが締め付けられるように病んだ。
「だとしたら、この状況も理解できる。肉片の一つも残っていないことがね。――あんた、人魚ってどんなんだと思ってる?」
急に問われ、多朗は混乱した頭を捻った。
「どんな……それは、上が人間で、下が魚で……」
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