第一話 恋愛ごっこ

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第一話 恋愛ごっこ

「春瀬……春瀬月乃(はるせつきの)……ない。またダメか……」 私はスマホの中の恋愛小説コンテストの受賞者一覧を三度、目でなぞる。私の本名である、春乃月瀬(はるのつきせ)を並び替えて作ったペンネームである春瀬月乃の名はどこにもない。 私は、昨日もらったばっかりの高校の卒業証書の筒を蹴り飛ばすと、原稿の下書きである分厚いノートを握りしめて玄関から飛び出した。 お気に入りの水色の自転車も今着ている淡いブルーのワンピースも今日は涙の色に見える。私はノートを自転車のカゴに放り込むとサドルに跨り、海辺へと向かってスニーカーを踏み込んだ。 ──もう何もかもが嫌だ! 家を出れば直ぐに急な下り坂が続く。私の人生なんて下り坂の連続だ。 「誰にも見つけてもらえないなら……何の意味もないっ……」 ──もう消えてしまいたい 「もう夢なんて……」 私はカゴの中のノートを睨みつけた。
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