甘いのは君のせい

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 息も絶え絶え死の刹那、僕は残りの力を絞って声にならない言葉を吐いた。 「シュークリームを……ここに……待ってきてもらえませんか……?」  なんとも往生際の悪い、とでも言いたげな連中は僕を一瞥すると、弟が小さくため息をついて枕辺から立ち上がる。こんな風に周りが冷遇するのも、普段から僕が軽口ばかりで本音で人と向き合わないからだろう。 「……今から買いに行くので、間に合わなくても知りませんよ」  気だるそうにそう言った弟の後ろ姿を眺める視界が歪むなか、僕は心で言い訳をする。 ──シュークリームが好きなのは、全部貴女のせいなのに。
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