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「うわっ」
「葵! サークルまだ決めてない!?」
「歩美。もっと普通に登場してよ」
「ごめんごめん。で、サークル決めてない?」
「決めてない。無趣味なんだよね」
「ふふ~ん。それなら葵にぴったりのサークルがある!」
「断る」
「ちょっと。聞いてから断ってよ」
「断る! どうせ園芸でしょ! この流れは昔からお決まりなのよ!」
「あ、やっぱり? さすが向日葵ちゃん」
「むかいあおい! ったく。名前と趣味は一致しないの!」
葵の苗字は『向日』だ。だが親が面白がったのか、名前に『葵』とつけてくれたおかげでフルネームの文字列は『向日葵』となり、付けられるあだ名はほぼほぼ『ひまわり』だった。黄色い服を着てれば向日葵みたいだと言われ、暗い顔をしていれば向日葵なのにと言われる。過去も学校では植物関係の活動に推薦され、やりたくもないことばかりをやらされてきてうんざりしていた。
「どいつもこいつも同じこと考えてくれちゃって!」
「ごめんって。でもぜーったい入る気になる。私もう入ったし。名前で釣れるなら釣った方が良い!」
「園芸なんて釣りたくない」
「違うって。とにかくチラシ貰うだけでもさ! 行こ!」
「ちょっと!」
抱き着いたままの歩美に背を押され、これも人付き合いだと諦めて渋々園芸サークルが勧誘している場所へと向かった。チラシなんて捨てればいいだけだ。
しかしそのチラシを受け取り葵の考えは一転した。
「園芸どう? 入らない?」
「入ります」
「よっしゃ。じゃあ気が変わらないうちに入部希望書いちゃって」
葵は即答した。チラシの内容など見ていない。見たのはチラシを配っていた赤毛の男子生徒の顔面だ。屈託のない笑顔は太陽のようで、にこりと微笑まれただけで葵の心は掴まれた。
イケメン目当てで即決した葵にすすすっと歩美が寄って来てぽんっと肩を叩いてくる。
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