嵐の前の静けさ

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嵐の前の静けさ

 その日、私は特急列車で約3時間の実家に帰省していた。  次の日に予定されていた、父方の祖母の三回忌に参加する為である。  昼ぐらいに到着して昼食をとっていると、昼休憩で仕事から戻った父が台所に入って来た。  短い他愛のない会話をする。  私と父は親子間の会話が恐ろしく苦手だった。  普通に話してるだけな筈なのに会話が続かない。私が話を続けようとすると、父は何か理由をつけて何処かへ行こうとしてしまう。そんな素っ気無い態度をされるので自分も父と話すのに昔から苦手意識があった。  また、まだコロナ対策が必要だと思っていたので、マスクを取った状態で顔を向けないようにそっぽを向けてさっさと食事を済ませた。  しかし後の事を思えば、私はここで父の顔をしっかり見ておくべきだったのかも知れない。  そうすれば、5ヶ月ぶりに顔を見るとはいえ何となく顔色が悪い事に気が付いたかも知れない。  
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