さくらでんぶ

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 箸を持つ手が動かないので、浩平は急かすように言った。 「早く食べようよ。腕によりをかけて作ったんだ。冷凍食品なんて一個もないんだよ」  語尾は少し得意げだ。確かに、四角いピンクの横には、ニンジンの豚肉巻きとか、菜の花のお浸しとか、大根と思われるおかかをかけた煮つけとか、グリーンピースとか、いろいろなおかずがきれいに詰められていて、美味しそう。彩りも茶色くならず、きれい。浩平はもしかしたら、いい主夫さんにもなってくれるかもしれない。そうじは苦手そうだけど。  私は無意識に箸を動かしたが、無意識の分本音が出てしまった。敷きつめられたピンクを掻くように横へどかしはじめていた。浩平は明らかにがっかりしている。あ、と気がついて箸を止めた。後ろめたい思いで浩平を上目遣いに見上げた。背の高い浩平がのぞき込むように私と自分の作ったお弁当を交互に見ている。私は困りながら愛想笑いをした。 「さくらでんぶ、嫌いなの?」  さびしそうに尋ねる浩平に素直にうなずいた。 「ごめん」 「甘いから?」 「……きれいだから」  
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