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そうして次第に心が疲れ、アデリナとは距離を置く様にしていた。
なのに相変わらずアデリナは私を財布扱いし、王都にある人気スイーツ店や、貴族に人気の演劇やオペラハウスを延々と連れ回した。
政務があるからと断ろうとすれば。
「私と出かけるのが嫌だとでも!?」
と我儘を言い、結局私をあちこち連れ回すという迷惑行為を繰り返す。
朝昼晩、王宮のどこにいてもアデリナは私用がない日は私のそばに纏わり付いた。
ずっとあの薄青紫の瞳で監視されていた。
疲れる。
これが一生続くのか………?
いくら自国の民のためとは言え、ランドルフの言う通り早まった結婚だったのだろうか。
誰かに癒されたい…………。
次第にそう思い始めた矢先だった。
「離婚しましょう。」
…………え?
「悪い物なんて食べてませんわ。
ただ……私は貴方の妻には相応しくないと分かったのです。だから離婚しましょう?」
突然のアデリナからの離婚宣言。
しかも今日はいつになく顔つきが違っていた。
真剣な眼差しで、いつもの悪巧をするような顔でもなく。
声も態度もいつもより謙虚で誠実に。
あの薄青紫の宝石の様な瞳で私をじっと見つめている。
一度だって私とまともに目を合わせようともしなかった妻が。
離婚………だと?
あんなに私を自分の所有物扱いしていた女が今更何を……?
またどうせいつもの下らない悪巧みだ。
私の気を引いて何か強請る気かもしれない。
そんな手に乗せられてたまるか。
その後もアデリナは食い下がるようにその件について何か訴えようとしてきた。
だが私はその態度がますます気に食わず、出ていけとばかりに彼女を執務室から追い出した。
結婚からたった一年でこれだけ私を振り回しておいて離婚だと?
ふざけるな。グツグツとこれまで感じた事のない、激しい怒りが湧き上がった。
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