prologue.性格の悪い妻に憑依したので、迷わず離婚します

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 「アデリナ。何か悪い物でも食べたのか?」    面と向かって離婚しようと言った。  善は急げと思い。    王宮の広さにドン引きしながら、侍女に案内されてようやく辿り着いた執務室という場所で。  そのど真ん中のご立派な机のご立派な椅子に座っていた夫のローランドは、明らかに怪訝そうな顔して返事した。  これがあの氷のローランド王……!    角度によっては薄水色にも見える銀の髪。  それを後ろで一本に丁寧に束ねてある。  見事な色よね。本当に地毛……?  威圧感のある切れ長の目。口元の黒子。  コスプレイヤーが着てそうな中世ヨーロッパ貴族風の服を着ていて、腕には金のカフスがキラリと光っている。  この何事にも動じないような重圧感はまさに氷の王という感じがする!そして若い!  暇つぶしにこの小説を読んでいた時は、あまりにも落ち着いた性格をしていたから勝手に老けたイメージを持ってた。  だが実際はまだ20歳と言われても納得できそうなハリ、艶のあるイケメンである。    これが私の夫(正確にはこの体の持ち主アデリナの)!  どうやら執務中だったらしい(そんなの知るか!)。  隅に控えていた補佐官風のメガネの男にギロりと睨まれた。  でも睨まれたって全然怖くない。  なぜなら私はあなた方の知っているアデリナではないのだから……!!  「悪い物なんて食べてませんわ。  ただ……私は貴方の妻には相応しくないと分かったのです。だから離婚しましょう?」  この人は王だからきっと言葉使いはこのくらい丁寧でなければいけないよね?  アデリナの喋り方なんかいちいち覚えてない。  ただ、とんでもない悪女だったとしか。  「……ハア、王妃陛下。見ての通り陛下は今政務中なのです。ご冗談はお控え頂きたい。」  補佐官風の男はアンティーク調のメガネを揺すり上げて、呆れたように溜息を吐いた。  この人は確か……  乙女ゲームに出てきそうなイケメンだけど冷たい感じの、ローランドの補佐官で……名前が……何だっけ。スミ……スミス……  ミラル……ミーラー…  「ランドルフ。待て。  何か良くは分からないが、この際アデリナの話を聞こう。」  あ・全然違った……!!!  正解はランドルフさん!!  「失礼しました、陛下。」  彼が引き下がるとローランドはふむ…とか言いながら偉そうに腕を組み、机を挟んで目の前にいる私に冷たい目線を浴びせる。  そして限りなく低い声で言った。  「言ってみろ、アデリナ。  今度は一体何を企んでるんだ?」    
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