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何にも……!?
私は何っんにも企んでませんけどね!?
それはお宅の奥さんでしょ(この体の持ち主の)!?
私は単にアデリナに憑依してる、日本生まれ日本育ちのふつーの主婦ですからね!
ついさっきまで、自宅で推しのアイドルグループのライブ配信見てましたけど何か?
ちなみに現実の我が家でも冷え切った夫婦関係で、夫は常に浮気相手優先にしてたクズ野郎でしたけど何か!??
ていうか私、死んじゃったの?
ライブ配信見てたその後の記憶がサッパリないんだけど。
気が付いたらアデリナの顔と体になっていてこの小説の世界の住人に……
あー…それにしてもこの小説の男主人公だっけ?
アデリナの夫、ローランド王!
人の話をろくに聞こうともしないで。
そんなだから平気で浮気なんてするのよ。
本当にムカつく男………!!!
◇
「アデリナ様……今夜はどうなさいましたか?
そのようにおやつを深夜に食べると…」
「は?」
「……ひいぃっ!」
あの後。
『また何か悪いことをしでかす前なんだろう?
お前は本当にろくでもない女だ。』
それはそれはご丁寧に……!
あの男、ローランドにまるで害虫でも見てるみたいに睨まれ、辛辣に毒を吐き捨てられ、どんなに取り繕っても全く相手にされず、気づいたら邪魔扱いされて部屋を追い出されていた。
ろくでもないって何よ!!
……言ってやりたかった、それはお宅のアデリナさんでしょ!って。
だが怒りが収まらないうちに周りの従者みたいな人達から夕飯だ、何だと言われて仕方なく席に着くはめに。
幸いあの男はまだ仕事があるらしく、食事中にまであの顔を見なくて済んだけどね!
ただ目の前にかなり豪華な食事が並んでいたけど、マナーが良く分からなくて本当に困った。
周囲はアデリナが怖いのか、誰も何も言って来なかったのがせめてもの救いなんだけど。
食後たくさんの侍女?達にお風呂に入れられて、あっという間に夜のシュミーズドレスというやつに着替えさせられていた。
アデリナの部屋は超豪華で、金色に輝く装飾品ばかりが置かれている。
ベッドもお姫様が寝るあの天蓋付きベッドというやつだ。
カーテンまで刺繍がキラキラ輝いてるから本当に目が痛い。
妙に冷たい視線で殺伐とした侍女達は「お休みなさいませ」とか言って頭を下げ、皆下がっていった。
ああ、彼女らのあの態度って。
アデリナこの国の人々にとことん嫌われてたもんなあ。
……とか思っていたら壁際の方に、一人の侍女が残っている事に気付いた。
どうやらテーブルの上に夜食として置かれていたクッキーを私が無意識に爆食しているのを見て、心配してくれたみたいなんだけど。
私の態度が悪くて怖がっているみたい。
誰だっけ?この人。
それにそんなに震えるほどアデリナが怖いのだろうか。
ただウエストが羨ましいくらい細い。
「あ……ごめんなさい。怖がらないで?そんなに脅かすつもりはなかったの。
それに怒ってるのは貴方に対してじゃないわ。
私が頭にきてるのは……ローランドよ!」
またさっきの出来事を思い出しては怒りが復活する。
いけない。
最近血圧が高めだったのよね。
健康診断もなんか引っかかってたし……
ただし侍女はポカンと口を開け、私を謎の生命体でも眺めるように見上げていた。
「……珍しいですね。アデリナ様がローランド様の事をその様に仰るなんて。」
「え………?」
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