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◇
アデリナ・フリーデル・クブルク。
このクブルク国の王妃。
小国クブルクを他国侵略から守ってやる代わりにアデリナと結婚しろという、マレハユガ大帝国の強引な取引の末に嫁いできた元皇女。
珍しい薄青紫の瞳に、青みがかった黒の髪。
アジア系の顔立ちで息を呑むほどに美人。
美人という設定は悪役あるあるである。
憎まれ役の悪役にせめてもの長所をという作者達のお情けかな?
それとも財も権力も美貌もありながら、ヒロインに負けるという展開が、アツいから?
第一皇女として生まれた時から甘やかされて育ってきたアデリナは、傲慢で我儘でとんでもなく性格が悪い。
そんなアデリナがローランドを本気で愛してたなんて……衝撃の事実でしかない。
だって小説がスタートしてからアデリナはただただ性悪妻としてしか登場してこなかったから。
読者がアデリナの悪事の数々に怒り狂い、壮絶なざまあを願う程のキャラだったから。
それがただの不器用な女だったと……?
いや、だったらちゃんとローランドに好きって言いなさいよ!
って、不器用だったから言えなかったのね。
謎は全て解けた。
だとしたらそんな不器用なアデリナは、ローランドにずっと悪女と誤解されたまま浮気されるという事になる。
まさか戦争を仕掛けてまでローランドを振り向かせたくて?
不憫………!
不憫すぎる!
確かにこの小説の内容を思い返せば、アデリナはローランドとリジーに対して酷いことばかり繰り返していた。
でも愛に飢えている孤独な王と、健気で愛情深いヒロインのリジーの恋はその度に燃え上がっていったのよね。
つい二人に頑張れ!
アデリナなんかに負けるな!と、思わずコメントで応援したくなるような。
え?作者天才?
考えてみれば邪悪でしかないアデリナの存在自体が、二人の恋の最強のスパイスだったのかも知れない。
後にローランドに一身に愛を受ける、リジーがヒロインのこの世界。
主役二人の心理描写は毎回当たり前のように登場していたけれど、逆に言えば性悪妻だったアデリナの心理描写なんか全くなかった。
だから、我儘で傲慢で悪事ばかり働くアデリナの本音なんか誰にも分かるはずない。
私は浮気された妻の気持ちが分かるからアデリナを同情の目で見てたけど……
本当は好きで好きでたまらない夫に悪女なんて言われて、浮気されて……
そりゃ戦争を引き起こしたくもなるかも。
それにリジーと不倫したローランドは、アデリナをほとんど無視していた。
よほどの用がない限りリジーを優先していた。
浮気男あるあるよね。
だってうちのクズ夫もいつも浮気相手優先だったから!!(あのクズ野郎!今考えたら離婚して慰謝料請求しておけば良かった!)
アデリナ。あんた、愛する人を奪われて辛かったのね。
って……今はまだ起こってない未来だとしても。
分かる。分かりすぎる。
でも………でもよ。
今そのアデリナに憑依してるのは私なのよ。
それが問題だから!
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