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確か終戦直前ローランドに破婚されたアデリナは、まだ少年だったヴァレンティンの死を知り、絶望しながら孤独に死んだはず。
つまり……このままだと私は死ぬ……!!
そんなの絶っ対嫌だ!!
地獄の様なバッドエンドを思い出し、一人ガックリと肩を落とすと、侍女がまた物珍し気に私を見つめていた。
「駄目…駄目だわ。
いくらアデリナがローランドを愛していたとしても、このままだとあの最低で最悪の結末は避けられない……」
「あ、アデリナ様……?」
「ねえ、あなた名前は……?」
「わ、私ですか?アデリナ様?
私はアデリナ様付きの侍女で、名前はホイットニーです……」
「そう。ホイットニー……」
ああ。確かそんな名前の王妃付きの侍女がいたよね。
アデリナのお気に入りだっけ?
「ねえ。聞いて。ホイットニー。
私、ローランドと離婚したいのよ。
だけど彼は全く相手にしてくれない。
…どうしたら別れられると思う?」
「わ、別れ?ですか?アデリナ様が?
どうして………こんなにもローランド様を愛しておられるのに?
それに……いくらローランド様に別れたいと離婚を切り出されても、許可はされないと思われます。
この国はアデリナ様の母国であるマレハユガ第三帝国によって加護されています。
その国の皇女様であったアデリナ様を受け入れるというのが条件でお二人は成婚なされたのですから…ローランド様がアデリナ様と離婚なされるというのは現実的にありえません。」
そうだ。このクブルクという国は周囲を大きな大国に囲まれた小国。
隙あらば侵略しようと狙う国が多い。
それを地図上で見ればすぐ真上のアデリナの母国、マレハユガ第三帝国によって守られているのだ。
ローランドはそのためにアデリナと結婚する選択をした。
どれだけアデリナの性格が悪くてもローランドは戦争に発展するまで離婚はしなかった。
「なるほど……パワーバランスというやつか。
だとしたら今はローランドに何を言っても無駄なのね。」
「ぱわ…ばら?」
不思議な言葉だとホイットニーは首を捻る。
もしも物語の強制力というやつがこの世界にも存在してるとしたら。
私がこのままローランドに浮気されて、戦争を引き起こしてしまう?
だとしたらやっぱり早めに何か策を講じなければ、最押しのヴァレンティンまでも失う事に。
いや………それだけは断固阻止!
あんなに母親思いの優しいヴァレンティンを失うという未来だけは必ず避けなければ……!
ん………?ちょっと待って。
「あ……!そうよね!そうよ。
とにかく私があの男と子供を作らなきゃいいのよ……!!
今はローランドと離婚の交渉をしつつ、彼に近づかないようにする。そしたら子供もできないでしょ!うん!それに限る!」
きょとんとするホイットニーは置いといて。
燃えるような決意を胸に、私は強く両拳を握る。
アデリナには悪いけど、母親の為にあの戦争を率いるヴァレンティンを、この世に生み出さなければいいんだ。
最推しの心優しきヴァレンティンの死を回避するためにも…………
要はローランドとや、ヤらなきゃいいのよ!
これでバッドエンド問題は一つ解決する…!
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