1章女王編・上

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9-3 先の見えないトンネル・1  昼になり、日和は弥生と共に中庭の屋根の下にいた。  雨は午前中に止んで雲の切れ間からは日が射している。 「日和ー……お昼ご飯、私と一緒でよかったの?」  少し不満げな弥生はじぃっと日和の顔を覗く。  日和は朝よりは少し人らしさのある表情をしているが、それでも今にも死にそうな、疲れ切った顔をしていた。 「…………うん。なんか、逃げる口実みたいにしてる……よね。ごめん」  昼食の時間、波音はいつものように声をかけてきた。  しかし日和は「弥生と約束があるから」と言って、弥生の手を引いて逃げてきたのだった。 「私は別に構わないけどー……波音ちゃん達とお話し合いした方がいいよぉ……?」 「……ううん、いい。私が居ても、邪魔なだけだから……」  心配そうにじっと視線を向ける弥生に、日和は首を振り弱々しく笑う。  そんな日和は今日、ついに弥生と食事をする際にはあった紙パックの飲み物すら、持っていなかった。  この様子ではきっと朝も食事をしていないだろう。  いくらなんでも死に一直線といきそうな日和の現状に、弥生は手に持っていたパンを一口サイズにちぎり、「食べる?」と差し出す。  「ううん、大丈夫」  日和は首を振り拒否をする。  しかし弥生は「そっか、分かった」と無理矢理口に押し込んだ。 「……日和、櫨倉命に何か言われたんでしょ?」 「むぐ……。言われてない。事実」  小さく咀嚼し、パンを飲み込む日和の表情はまた落ちる。 「言われてるじゃない。気にしちゃ駄目だよ」 「……いいの。それに、だからってどうにも出来ないよ。それなら私は……ごめん、なんでもない」  日和は口を噤み、その顔はもう何も喋らないと訴えていた。  これ以上弥生にはどうすることもできず、残ったパンを食べ切り、紙パックドリンクを飲み干す。 「日和がそう言うなら、分かったよ」 「……ごめん、ありがとう」  昼食時間の終わりを知らせるチャイムが鳴って、日和は一人、教室に戻っていった。 「だってー。そーゆー事みたいだけど、どうするのー?」  弥生は後ろの花壇にわざとらしく声をかける。  花壇の裏に居た波音は立ち上がると、弥生に視線を向けて頷いた。 「大体分かったわ、ありがとう。後で駅前のシュークリームでも奢るわ」 「私の友達が心配なんだから、この気持ちはお互い様でしょ? 今度三人でショッピングしようよ」 「ええ。じゃあ、近いうちに予定空けるわ」
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