1章女王編・上

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9-1 狐面・1  妖調査部、通称狐面。  パーカーを羽織りフードを被った上で白地の狐の面を被る神宮寺師隼の駒だ。  狐面は二,三人で行動する。  年齢も性別も様々、一番の特徴は術士はおろか彼ら狐面同士でも互いを知らない、という部分にある。  また、『互いを知ってはいけない』という制約もある。  これには相手の余計な部分を知ることで、妖を生む可能性を減らす為であるという。  『冷厳に徹せよ』  それが狐面の信条だ。 「なんであんな女が監視対象なんだ、解せない……!」  鳶色の髪を綺麗に肩で切り揃えた狐面の声色には憤怒が混じっていた。  狐面は姿が判別しづらいよう、パーカーを羽織りフードを被るものだ。  しかしこの者はそれを拒絶するようにフードを衣服の内側に織り込まれている。  少女の耳には珍しくも耳輪の一部が欠けていて、それを隠しもせずよく目立っていた。  そのパートナーであろう、40代男性のような少し枯らした声が(いさ)める。 「おい、お前は新人か? だったら口を慎め。術士様の言うことは絶対だ」 「いーや、納得できないね! つい最近現れた女が突然監視対象になるなんて、絶対術士様の誰かに色仕掛けでもしたんだ!」  鳶色の狐面は更に憤慨する。  面では分からないが、その発言からかなり頭に血が上っていることは確かだ。 「失礼なことを! いい加減に……――」 「――いいさ、この僕があの女の護衛なんて必要ないと証明してやる!」 「おい、こら!」  飛び出すように、鳶色の狐面は町を走り抜ける。  制止に失敗した狐面の男は頭を抱えた。
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