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「や・・・やあ!」
アルは、まだ恐怖にブルブル震えながら挨拶をした。
「ああ、こんにちは。お前さんは、なぜブルブル震えているのかな?」
その声は優しかった。
「そりゃあ、怖いからだよ」
「怖いと震えるのか?怖いなら、なんでわしの鼻に乗ってるんだ?」
「怖かったのはあの連中さ」
アルは、森に帰って行くトロオドンを鼻先で指した。
「あいつら?」
「さっきこの辺をウロウロしていた奴ら」
「遠くはよく見えんのだ」
アルは、トリケラトプスの優しい大きな瞳を見た。
「ありがとう、オヤジさん!助かったよ!」
「よかったな。ところでオヤジさんって何だ?」
「オスの親のことだよ。オヤジさんは親を知らないの?」
「知らないな。ところで、わしはお前の親じゃないだろう?」
「もちろん!でもおいらたちの群れでは、リーダーのことをオヤジさんって呼ぶんだ。オヤジさんは、いつも1匹なの?」
「わしらは群れない」
「寂しくない?」
「寂しい?」
「きっと本当は寂しいんだよ。でも、いつも1匹だから、寂しいってことがわかんないだけさ」
トリケラトプスは、鼻先に小動物を乗せたまま、ゆっくりと歩き出した。
そして、シダの茂みに着くと、嘴で葉をついばみ、臼歯でモグモグと咀嚼した。
アルは、シダの葉に小さな虫を見つけると、ヒョイッと飛び降り、捕まえて食べた。
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