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「……」
う。
ちょっと緊張しちゃうかも。
婚約者さんと会うのは初めてで、ましてや二人きりなんて話題が全く見つからない。
私は何を話していいかわからず、とりあえず残っているオレンジジュースを飲み干した。
グラスの底で、氷がカランと崩れる。
ストローから空気の抜ける音が鳴った。
すると婚約者さんと目が合う。
彼は優しく笑いかけてきた。
「飲み物、なにか追加しようか」
そう言って、メニューを差し出してくれる。
私は慌てて首を振った。
「あ!だ、大丈夫です。むしろ、ちょっとお腹タポタポなくらいなんで!」
なんて、間抜けなことを言ってしまった。
婚約者さんは「わかった」と穏やかな声でうなずく。
……はずかしい。
でも、話しかけてくれて、少しだけ緊張が溶けた気がする。
婚約者さんは笑顔を浮かべたまま、また話しかけてきた。
「桜ちゃん、本当に海と仲がいいんだね。話には聞いていたけれど、本物の姉妹みたいだ」
「そ、そうですか?
……でも、確かに海ちゃんのことは、叔母さんというよりお姉ちゃんみたいに思っているかも」
「へえ」
海ちゃんは、私のお父さんの妹。
なんだけど、お父さんと海ちゃんは結構年が離れていて、私が産まれたとき海ちゃんはまだ中学生くらいだった。
そんなわけで、私にとって海ちゃんは叔母さんというより、年の離れたお姉ちゃん…の方が近い気がする。
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