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「それだけならまだ良かったんだけどな…それでもまだ多額の借金があったんだ。
それを苦にして…両親は…心中した。
借金がどうこうっていうよりも、きっともういろんなことで二人は精神的に限界まで追い詰められてたんだろうな。
……当時、ガキだった俺にはそんなこともわからなかったけど。」
ダグの声は暗く沈んでいた。
彼は何も出来なかった自分を悔いているのだ。
だけど、そんなのは仕方のないことだ。
彼は子供だったのだから…
どんな言葉をかければ良いのかと迷っているうちに、彼はさらに言葉を続けた。
「両親のことは悲しかったが、それから、長い年月が過ぎて、そんな記憶もいつしか風化していった。
俺は幼馴染のメアリーと結婚して、それなりの幸せを手に入れたと思っていた。
ところが、そんなある日、両親を騙した男に会ってしまったんだ。
そいつは、両親を騙したことを…そいつのせいで両親が心中したことを少しも悪いとは思ってなかった。
それどころか、両親のことを負け犬だって笑ったんだ。
話してるうちに俺は込み上げる怒りを止めることが出来なくなって…
気が付いたら、俺はそいつを殺してた。」
ダグは拳を握り締めていた。
「……そうだったのか。そんなことが……」
「俺は後悔なんかしちゃいない。
両親の敵討ちが出来たんだからな。
あんな奴らは死んで当然だ!
だけど…妻と子には本当に申し訳ないと思ってる。
俺がコールドスリープに入った後、二人がどうなったのか今でも気になるが、こんなことになっちまった今、調べようもないよな。」
ダグの顔に浮かんだ切ない笑みに、僕は胸が痛んだ。
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