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「旦那様、ジュリアン様がお見えになりました。」
「やぁ、ようこそ。
初めまして。ベルナール・ディルマンです。」
「は、初めまして。」
ベルナールは僕より頭一つ分程背が高い。
上等なスーツに身を包み、僕の手を握りしめるその手はとても力強い。
彼の体からは爽やかな柑橘系の香りが漂っていた。
「さぁ、掛けて下さい。」
「あ、ありがとうございます。」
革張りのソファに浅く腰を掛けた。
「あ、わざわざお迎えに来ていただき、どうもありがとうございました。」
「いえ、こちらが呼び出したのですから当たり前のことですよ。
こう見えて、僕もけっこう忙しいもので…無理を言って申し訳ありません。」
雑誌で見るよりも彼はずっとハンサムだった。
笑顔が爽やかで、品があって、瞳がキラキラと輝いていて…女性なら誰でも彼に惹かれるだろうと思う。
男の僕だって、ドキドキしてしまうくらいなのだから…
「す、素敵なお住まいですね。」
話の間を保つために、僕はそんなお世辞を口にした。
お世辞というより、それは真実だが…
「ジュリアンさんは芸術に関心はおありですか?」
「え?」
「これはジュスタンの女神像なんですよ。
美しいでしょう?」
そう言って、彼は長椅子の傍にあった女神像を示した。
「あ、あぁ、そうですね。素晴らしいです。」
僕には芸術はよくわからない。
その像は、なんとなくバランスが悪く、グロテスクなものだなと思っただけだった。
「小ぶりですが、とても重いのですよ。
持ってみて下さい。」
「は、はい。」
これはきっととても高いものだろう。
落としたらえらいことになる。
僕は慎重に女神像を掴み、持ち上げた。
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