めぐり逢い~遥かなる時の彼方で

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「あの時、彼は私に法外な金額を請求しました。 アンナと別れてやるから、金を出せと言ったんです。」 「嘘だ!僕はそんなことは言ってない!」 「静粛に…!」 ベルナールの嘘に、僕は怒りが込み上げ、身体が震えた。 「私はお金で片が付くのならそれでも良いと思っていました。 しかし、彼の要求は現実離れしたものでした。 私がいずれ相続するすべてのものをくれと言ったのです。」 「嘘だ…!」 「いくらなんでもそんなことは出来ない。 もっと現実的な話をしようと言うと、彼は突然、女神像を掴み、私に襲い掛かって来ました。 それを見たアルフレッドが、咄嗟に私をかばい、そして、彼は……」 ベルナールは涙声でそう言うと、白いハンカチで瞳を押さえ、深く俯いた。 こいつは天使なんかじゃない…悪魔だ。 俳優でもないというのに、こんな嘘を平然と吐けるなんて… 「私も見ました。 この人がアルフレッドさんを殴るところを…!」 そんなはずがない。 メイドが来たのは、執事がベルナールに殴り殺された後だ。 そもそも、僕は執事を殴ったりしていない。 なのに、何故? すべてが僕にとって不利な方へ進んだ。 僕ははめられた。 アンナと結婚したいがために、この男は僕を地獄へ突き落したのだ。 だが、気付いた時には遅かった。 僕の叫びは誰にも信じてもらえない。 信じてもらえないままに、僕にはコールドスリープの刑が確定した。 一生、目覚めることの出来ない眠りに就くのだ。 濡れ衣を着せられて… 「ジュリアーーーン!」 連行される僕の耳に、血を吐くようなアンナの絶叫が届いた。 アンナは僕のことを信じてくれているのだろうか? ぼんやりとそんなことを考えながら、頬を熱い涙が伝うのを感じた。
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