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「ジュリアン!」
「……えっ!?」
「どうしたんだよ、ぼーっとして…」
「あ…あぁ、すまなかった。
……ちょっと昔のことを思い出してた。」
「そうか…いやなことを思い出させちまったかな。」
「いや…そんなことはない。」
それは嘘ではない。
久しぶりにアンナのことを思い出したのだから。
目覚めてからはいろんなことがありすぎて、不思議と彼女のことを思い出すことはなかった。
彼女の最後の記憶は切ないもので…
思い出して楽しいものではなかったが、それでも僕にとってあれは大切な思い出だ。
あれからアンナはどうしたのだろう?
ベルナールの嘘を信じて、彼と結婚したのだろうか?
彼女は幸せだっただろうか?
「ジュリアン…もしかして、あんた、好きな人がいたんじゃないか?」
「え?ど、どうして?」
「やっぱりな。そんな顔してたから…」
ダグに言い当てられ、何だか照れくさくて、僕はそっと俯いた。
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