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「君はどうなんだ?好きな人はいたのか?」
「あぁ、いたよ。
俺には愛する妻と、生まれたばかりの子供がいた。」
彼は僕より少し若く見える。
だから、つい独身だと思い込んでいたが、早くに結婚すれば、子供がいても不思議はない。
「そうだったのか、それは辛かっただろうな。
どうしてそんなことになったんだ?」
「確かに辛かった。
でも……仕方なかったんだ。」
ダグは、そう言って苦笑した。
聞くべきではなかったのかもしれない。
聞いたところで、今更どうなるわけでもないのだから。
僕が話を変えようとした時、ダグが唐突に話し始めた。
「俺の両親は、以前、詐欺にあったんだ。」
「……え?」
「親友と言って良い程、仲の良い友達からの儲け話だったから、簡単に信じちまったんだな。
うまいこと言われてそいつに騙され、金をふんだくられ、おかしいと気付いた時にはすでに営んでいた工場は潰れ、家も取られていた。」
「それは大変だったな…」
僕の不用意な言葉が、ダグに嫌な記憶を思い出させてしまった。
話を打ち切ろうと思ったが、ダグはなおも話し続けた。
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