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最初に会った時から、ダグにはいやな印象はまるでなかったが、本当に彼はまっすぐで純粋な人なんだと思う。
そんなダグが、人を殺め、コールドスリープの刑を受けることになろうとは…
運命の皮肉というものを、強く感じた。
僕はダグ程、前向きな気持ちは持っていない。
生きる目標のようなものも何もない。
だが、死にたいと望んでいるわけではない。
隕石の落下で数えきれない程の人々が死んだ。
今、生き残った者達も、そのほとんどが肉親や愛する人を亡くしている。
僕らと一緒に眠っていた囚人たちも大半が死んだ。
その中で生き残ったということには、やはり何らかの意味があるように思う。
だから、前向きではなくとも僕はこの命を全うしたいと思っているし、僕に出来ることはなんでもやろうと思っている。
そういう意味ではダグと同じ気持ちだ。
あの日から400年余の時が流れてしまったけれど、僕は400歳ではない。
コールドスリープのおかげで、まだ二十代後半の青年だ。
死に焦がれるには若過ぎる。
「あ、ずいぶんサボっちまったな。
そろそろ戻らなきゃな。」
「そうだね。」
僕達は、思いがけず長くなってしまった休息から立ち上がった。
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