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その時、大きな物音がして、僕は立ち止まった。
振り返ると、金属の桶のようなものが転がっていた。
それを落とした女性に視線を向けた僕はそこで信じられないものを目にした。
(そ、そんな馬鹿な……!)
まるで、時が一瞬で凍り付いたような気がした。
息をすることさえ忘れてしまいそうな緊迫感に襲われた。
「ジュ…リアン……?」
喉の奥から絞り出したような声で、僕の名を呼んだのは…
「アンナ……」
その名を口にしながら、僕はそんなことがあるはずないと思っていた。
そう…あれから400年程が経った今、アンナがここにいるはずがない。
しかも、別れたあの時と変わらない姿でいるなんて、あり得ない…
そうだ…僕は幻覚を見ているんだ。
そうでなきゃ、説明がつかない。
しかし、なぜ…なぜ、僕はこんな幻覚を見てるんだ!?
僕はその場に立ち尽くしたまま、速まる鼓動を押さえることが出来なかった。
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