出で合いて。

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 皆其の箱へ釘付けだ。件の証拠となる物が、国宝とは何足る事態。中には件へ携わる者も居て、東の国宝を目にする事が出来るとはと目を輝かせる者も。只一切に至っては、もう無の境地。若気の至り故の黒い歴史を自ら西へ運び、晒すのだ。悟りでも開かねば、成し得ぬ事であろう。此れは、『一刀』がやらかした他人事。決して、己がやらかした事では無いのだと胸の内で繰り返し。  家臣等の其々の反応を、聖は冷静に眺めて。 「故、西でも鑑定をと東の帝より要請を受けた。既に一切殿は、東の帝より正式に特級国民章偽造の疑い無しとされて居る……再び、我が父が招いた国賓として敬意を持って接する様に――」  聖の強い宣言へ、家臣等は改まり一斉に厳かな拝にて答えたのであった。  其れより。直ちに聖は、此の報告と琥珀の書簡を届けに明石と近江の元へ向かう事に。明石と近江は、聖が持ち帰った書簡の内容と一切の持ち込んだ東の国宝へ驚愕した。望みのままにと聖の背を押したが、こんな流れになるとは想像出来ず。勿論、其の場で国宝を確認した明石と近江は赤面しつつも、此れは重要な事を左右すると。息子聖と一切の未來だ。明石は、直ちに筆跡鑑定の命を下したのだった。  そして。此の宮廷を駆け巡る怒涛の動きが、ある者等へは暗雲となる。 「――何……一切が皇子様と西へ戻ったと?」  側近による緊急の報告を聞き、表情を強張らせる声は柳より出たもの。其処へは、噂を逸早く聞き付けた馬酔木の姿も揃い。 「どういう事か、柳殿。一切を追い出す為、私も失態を作るに手を貸したのですぞ……追い出す処か、彼は東皇家の血を引くとも証明され戻って来たのだぞ……っ!」  馬酔木は、憤りと此れよりの不安に震え、強く笏を握り締め言葉を放つ。柳が、そんな馬酔木の言葉へ強く睨み。 「私一人に其れを擦り付けなさるか?貴方も、一切の強制送還へ満悦であられたではありませぬか!」
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