出で合いて。

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 其の後。海里により、聖の私室へと送り届けられた聖と一切。先程明石が命じた様に、再び明石の許しがある迄は極力部屋を出てはならないとの事。他との接触も、慎重に監視せねばならないとも。であるならば、聖の学術指南をと願い出た一切。出戻りにて部屋に運ばれた、芥子色の風呂敷に包まれた物を此処へと依頼。直ちに手配がなされ、聖は一切の指導を受ける事に。  が。此の流れに若干眉を寄せた聖。そんな日常を過ごすより、もっとこうあるだろうと。折角一切の容疑が晴れ、両親公認の婚約が叶うたのだ。婚儀についても語り合いたいし、何なら先程の飛んでも無い事実の件だ。其れを突き止めた経緯等も知りたいと言うのに。 「――此方の数式ですが、此処での計算に間違いが御座いました。珍しいですね、皇子様がこんな処をしくじるのは」  算術の問題用紙を前に、採点をした一切がそんな事を。 「其れはそうでしょうよ。複雑な私の心境、御察し頂きたい」  聖より思わず出たのは突っ込みである。 「何事です?」  無表情にてとぼける一切へ、聖は机上へ強く手を叩き付ける。 「色々ありますが、先ずは馬酔木と柳だっ!どういう経緯で、あの様な事が明るみに出て来たのか!目星を付けた者の経歴書類は出たと聞いたが、其れ以降聞かされて居りませぬぞっ……!」  最もな意見だ。一切の特級国民章偽造の事案で、頭も精神も手一杯。己の襲撃事件等朧気であったので余計だ。聖には、何がどうしてこうなったと。  一切は、一先ず採点を終えた算術問題集を横へ置く。一度軽く聖へ頭を下げて。 「皇子様の襲撃事件は、私にとって何より優先して下手人を捕えるべき大事。皇子様へ詳細な経緯を知らせなかったのは、気を揉ませる事無く日常を過ごして頂きたかったからです」
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