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「――し、しかし、其の狙撃役の男を特定等と……此れは、至難の技では……ど、どうやって?」
流れは把握出来たが、其処が突っ込み処と。まさか、こんな短期間の捜査で可能であるのかと。
「そうですね。此れは私も語るに不本意ですが、殆んど一刀の導きと言うか……共闘ですな。此の結果に、私も認めざるは得ませんので」
「きょ、共闘……一体、どういう……?」
目を丸くさせ前のめりになりながら訊ねる聖へ、一切が一つ息を吐いて。
「聖が好む、夢物語が見せる幻想的な力ですよ」
一切は、己の中で不可思議な事態が起きていた事を聖へ打ち明けた。其れは、落馬する聖を受け止めた後より。涙を流す聖の接吻を受けて直後、酷い頭痛から記憶が無いと。次に見えた景色は、何故か抱えて居た聖を御殿医へ託す処で。しかし、其の時に一刀の記憶が一切の中で蘇った。聖も、其の話を聞きながら其の時の記憶を探る。言われて驚いたのだが、一切へ接吻をした記憶等無いと頬を赤らめて。
「――犯人をどう捜索するかと行き詰り、山の周辺地図を只眺めて居ると、ふと麓にある数件の村に目が行き、何と無く其処を探れば良い気がして……菊水に依頼しましたらば、今此処に繋がりましたからね」
一切の語りへ、聖は瞳を輝かせる。
「何と……やはり、私が憧れたものは空虚なものでは、決して無かったんだ……」
「だが、そんな面妖な力はもっと重要な処で出て貰いたかった」
言いながら突如、感極まる聖の手を取った一切。癒えたものの、其の腕に残る傷痕へ酷く憂えて。緊張気味に聖が、一切の顔を覗き込む。
「一切……?」
聖の手を握る一切の手が震え出す。
「奴等を捕えても、お前の傷は最早如何にもならぬ。斯様な傷をよくも……俺がどれだけ大切に囲うたと思うとるのだ、あの下衆共め……っ」
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