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そう答える声に、聖は感慨深げに一切の背後へ並ぶ付きの護衛官等を眺めた。
現在一切の家は、東の上級貴族へと列せられる。切っ掛けはやはり、家宝の特級国民章と書状、国宝となった暗黒の恋文。無視出来ぬ此の事実に、琥珀が現東皇家筆頭を召集し、議会を行ったのだ。一切の先祖は、一刀帝の祖父にあたる先帝より認知を得た姫の子であった。とは言え、一切を皇家へ迎え入れるは一刀帝の正式な決定に反する。しかし、其の血が東皇家へもたらした影響は大きい。一匡の現在の位置、一切の才や経歴に加え西の后妃として召し上げられた事実に、其の身分を引き上げる決定が成されたのだ。
「やはり変わらず、東は華やかですね。懐かしい」
「そうでしょうか。此方は、慎ましやかなものですよ」
嘗て我等が見て居たものに比べれば、と。一切、聖の中で蘇る記憶、思い。今は昔のあの日から、東西の歩みが始まった。遠くても、長くても、必ずやってくると信じた時代。共に馳せた夢。
聖は、一切の手を両の手で包む様に取る。
「全てが、あの御縁から……又、共に眺めて行けますね。桜も、百合も、紅葉も、愛する雪景色も」
微笑む聖の瞳に、幸せな涙が滲む。其の笑顔へ、一切も聖を抱き寄せ其の手を包む。
「ああ。今度は、我等が夢見た景色が叶うた時代でな――」
別たれて居た二つの国。共に昇る日の美しさを分かち合う時が、きっと来ると祈って、信じて。瞼を閉じた。
再び瞼を開いたらば、其の夢が叶うた時代。
恋する為に。
愛する為に。
共に夢見た世を、共に眺める為に。
再び出で会うた。
其処は、四季が在る美しい処。
春は、咲き乱れ舞い散る桜に思いを馳せよう。
夏は、日差しが和らいだなら恋に身を焦がす蛍に魅せられて。
秋は、夕暮れの中更に赤く色付く紅葉を見詰めて。
冬は、穢れなき白に染まった景色を眺めよう。
此の美しく素晴らしい、ひいづるところにて。
又、共に。
――完。
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