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そしてまた、夏
7月初め──梅雨が明けた。
その日は雷撃文庫の『漫画原作大賞』の発表日で、以前最終選考で落ちた小説を手直しして投稿していた僕は、結果発表の載った漫画雑誌を買いに、街の本屋へ出かけていた。
「日差しがキツイな。」
ギラギラと照りつける夏の太陽に、僕は思わず顔をしかめる。
しかし、この雑誌を買わないわけにはいかない事情が僕にはあった。
僕が書いた小説『Flower Gate』がめでたく大賞に選ばれたのだ。
それを数日前にスマホと電話で知らされた僕は文字どおり飛び上がって喜んだ。
「漫画家の先生との打ち合わせは、来月の受賞式の後に──」
「ありがとうございますっ!」
編集部の人の話をロクに聞かず、まるで新入社員の入社挨拶のように僕は大きな声で元気よくお礼を言った。
さて……今日も寄るとするか……
桜が散り、梅雨の季節になっても僕は、最低週に2回はお墓参りを続けていた。
元々は墓の主が目当てではなく、そこに来るであろう鶴野さんと偶然再会することを期待しての墓参りだったが、いつしか僕は難病でこの世を去った墓の主に向かって話をするようになっていた。
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