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2階の住人は201号室の鷲尾さんと202号室の鳥居さんの2人で、203号室は空き部屋だ。
鷲尾さんは地元の小さな交響楽団でバイオリンを弾いている音楽家志望の青年で、それだけじゃ食っていけないらしく、バーテンのアルバイトをしている。
爽やかな笑顔が良く似合う長身のイケメンで、こう言っちゃなんだがとってもモテそうな人だった。
もう1人の鳥居さんは「脱税請負人 黒澤羊子」という重厚な脱税ミステリー小説でデビューしたホンモノの小説家で、売れた後も何故だかここにずっと住んでいる人だ。
「あの……タワマンとかに引越ししないんですか?」
「私がタワマンに引越ししたら儲かるんですか?」
あー……この人こういう人か……
ともあれ、歓迎会には2人とも参加してくれる。と、僕は後で鶴野さんに聞いた。
ちょっと変わってるけど、鳥居さんも悪い人ではないらしい。
せっかく歓迎会を開いてくれるなら。と、僕は(ホントは1人で飲むために)実家から持ってきた白ワインを提供することにした。
────
「あ、コレ、ブルスケッタ。っていうんです。」
「へぇ……」
引越しから僅か2日後の歓迎会の日──鶴野さんが用意してくれたのは、スライスしたバゲットにいろんな具材を載せた料理だった。
流石プロだ。食べ易い一口サイズに大きさも揃えていて、色合いも綺麗だ。
「あと、唐揚げも用意してますので……」
そう言いかけて、俺の用意した差し入れの白ワインに目をやり、彼女はわぁっ。と目を輝かせた。
「よかった♪ブルスケッタにも唐揚げにも合いそう。ありがとうございます!」
心底嬉しそうな彼女の顔を見ていると、まだ酔ってもいないのに頭がくらくらしそうだった。
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