そしてまた、夏

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「あ、あの、この間……というかもう結構前だけど、話聞かずに申し訳ありませんでしたっ!」 しどろもどろになりながらも、ずっと伝えたかった事を僕は何とか言葉にし、深々と頭を下げた。 「いえ、あたしこそ。」 黙っていなくなってごめんなさい── 春の出来事を怒るどころか、彼女は僕に向かって頭を下げた。 「いやいや、鶴野さんが謝ることはないですよ!僕のほうこそ──」 「何か、お互い謝ってばかりですね。」 顔を上げた鶴野さんは初めて楽しそうに笑った。 「つ、鶴野さん!トキワ荘へ戻って来てください!そして僕と結婚してください!」 「……。」 鶴野さんが急に笑うのを止め、墓地は一気に静寂に包まれた。 しまった── 言った瞬間、僕の心を後悔の闇が侵食してゆく。 トキワ荘に戻って欲しい── 彼女に再会した時、ここまでは言おうと思っていた。が、プロポーズまでするつもりはなかった。 鶴野さんと結婚したい。心の底から僕がそう思っていたのは事実だ。でもこんなタイミングで性急にプロポーズなんかしたら鶴野さんだって困惑するに決まっている。 今のはちょっともののはずみで── 慌ててそう弁解しようとした僕より先に、鶴野さんが沈黙を破った。
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