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ひとまずは和やかな空気で始まった僕の歓迎会は、ものの30分もしないうちに不穏な空気に変わっていった。
「どう?俺の作品。コレをたたき台にして、漫画、テーマソング、映画にも広げていきたいと思ってんだけど。」
よほど自信があったのだろう。歓迎会で鷹羽さんは、僕や他の人たちに自作の小説や漫画の原稿を披露したのだ。
うーん。コレってどういう話?
最初に小説を読んだ僕は固まってしまった。
ハチャメチャドタバタ劇なんだろうけど、セリフのみで描写がほとんどないため誰が何を言ってるのか分からない。
「全然ダメだね。」
「ええっ!?」
僕の次に原稿を読んだプロ作家の鳥居さんが、大リーグのテストを受けに来た草野球の選手を見るような目付きで論評を始めた。
「あのさ、キミこれ筒井康隆か何かに影響受けてんのかも知れないけどさ、筒井康隆好きな人はキミじゃなくて筒井康隆読むし、筒井康隆嫌いな人はそもそもこんな支離滅裂な小説読まないよ?つまりキミの小説には需要がない。」
「……。」
「大体ナニ?小説に漫画に音楽に映画?キミさぁ、こう言っちゃなんだけど自分を神様か何かだと思ってんの?」
「まぁまぁ……」
何とかその場を穏やかにしようとする鶴野さんの声すら耳に入らないかのように、鳥居さんの説教は続いた。
「世の天才と呼ばれる人でさえ、1つのジャンルを極めるのがせいぜいなのに、キミごときの才能で4つもモノになるはずないだろっ!1つに絞れ1つにっ!」
楽しい歓迎会の場が、冬場のシベリアのように凍りついた。
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