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「あ、でもこの漫画面白いかも。絵も上手いし。」
凍りついた場の雰囲気を何とかしようとありとあらゆる感覚を総動員させ、僕は彼が持って来ていた漫画の原稿を見つけ出し、素早く目を通すとひらひらと見せびらかすように披露した。
「ふむ……漫画に限ればモノにはなるかな……」
幸運なことに彼の漫画の出来映えはかなり良く、キャラクターの書き分けもちゃんと出来ていたため、僕は漫画を読むことでようやく小説の内容が理解出来た。
辛辣極まりない独演会を披露していた鳥居さんでさえ漫画についてだけは評価した。
「これだけ漫画描けるなら、これ1本に絞って真面目にやれば──」
「そうか!」
鳥居さんのセリフを遮り、彼はポンッと手を叩いた。
「俺は真面目過ぎたのか!これからは皆さんのように不真面目にやるよ。そのほうが健康にも良さそうだし。アドバイスありがとう!」
「……。」
歓迎会の場が再び静まり返った。
────
「あの……」
その後、鷲尾さん自慢のバイオリンと自作のカクテルが場を和ませ、歓迎会はどうにかこうにか無事に終わった。
後片付けをしている僕(何故か歓迎会場は僕の部屋だった)に、一緒に片付けてくれていた鶴野さんが話しかけてきた。
「はい?」
「さっきは鷹羽さんのフォローありがとうございました。優しいんですね。」
彼女の微笑みと感謝の言葉が、僕にとって最高のプレゼントになった。
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