31-2★

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 「あ~あ!大好きなおじいちゃんがそんなクズ人間だったなんて、ショックだよな~?  それでどうだ、真実を知ってしまった気分は?辛いかぁ?」  「.........はい」  「今の、今までのこと全部忘れたいかぁ?」  「.........忘れ、たいです...」  「おっけ~。承り~~!」    二人の返事を聞いたところで、俺は二人の頭に手を乗せる。直後...眩しい光が部屋一面に広がった......俺の魔術だ。  「おい...二人に何もしないでくれ、頼む...止めてくれぇ!!」  「はっはっはー。傷つけてやしねーよ。中身を少し弄っただけだ」  数秒後、光が止み、そこには先程と変わりない様子の、遅川の孫たちがいる。二人の無事を確認した遅川は安堵している。  そんな遅川をおめでたい奴だな…と一瞥してから、二人のガキに再び話しかけてみる。  「よぉお二人さん。早速で悪いが、君らの名前を教えてくれるか?」    俺のそんな問いかけに遅川は疑問の目を向ける。今さら何だと言いたげの様子だ。名前くらいすらすら答えられるに決まっている。  そう思った遅川だったが、10秒以上経っても名前を答えないことに違和感を覚え、二人の方を凝視する。そこには頭を抱えている二人の姿が映っていた。  「「..................分からない」」  「......は?」  二人の予想外の返答に、遅川の顔が凍り付いた。  「な...何を言ってるんだ!?麻衣子ちゃん!海斗君!!二人の名前だよ?わ、忘れたのか...!?」  遅川の声にビクッとなった二人だが、再び困惑した表情を見せる。それを確認した遅川は、放心状態となる。口からは壊れたラジオのように、掠れた声が漏れている。  「お前の腐りきった真実を知って、その二人は辛いって言った。その後その辛い事実を忘れたいとも答えてくれた。だから俺はその望みを叶えてやった。  ―—こいつらのんだよ!ただ…加減が難しかったから、うっかり自分の名前や年まで忘れさせてしまったのは、申し訳ない。  まぁでもこれで、二人の記憶からは嫌なことも全部、忘れることも出来たわけだ。良かったなァ、こいつらの傷ついた顔を見なくて済んでよぉ!」  「あ、あああ......そんな...俺のことも、宗助たちのことも全部、か...?」  「そらそうやろ......あ。せやせや、他にも追加設定を施したんやったな。おい君達ー!」  遅川の絶望顔を嘲笑いながら二人を奴の前に立たせて再度問う。  「この、心が汚れ切ってるヤニカス老害について、どう思う?」  そう問うた直後、二人の顔が嫌悪に歪んだ...!  「何でだろう...この爺さんのこと何も知らないのだけど、何だか凄く不快感を感じる...!何か、悪い人だと、思える...!」  「......え?」  「確かに、何か...生理的に無理な人だわ...。近くにいて欲しくない人種です...」  「な......なん、で......」  「――っ、ぷはははははははは!あっははははぁ!!」  とうとう堪え切れずに爆笑してしまい、しばらく遅川の絶望しきったクソ面を見ては爆笑していた。  「~~~あー笑った...!いやな、この子らに施した処理なんだけど。一つは記憶消去。  そしてもう一つ、これがまた、我ながら面白い処理を施してしまったわけよ!  この子らには遅川たけし…お前に対してだけ、途轍もない嫌悪感と不快感、そして憎悪を抱くよう、洗脳処理を施しておいた!」  「———————」  「お前がかつて俺だけ無視したり除け者にしたように、今度はお前がかつての俺と同じ目に遭うことになる!  たった今お前はぁ、誰からも無視されてハブられる存在になってしまったんだよぉ!!」  「そ、そんな......そん、な、ぁ............」  遅川にとって絶望的であろう事実を突きつけられたようだ。事実、本人は完全に心が折れた様子で涙を流している。その顔は絶望と悲痛に歪んでいて、俺をさらに愉しませてくれる…!  「あーそうだ。せっかくだから、今の二人にさっきの話をしてみようか!  二人ともいいか、この目の前にいるジジイはな――」    数秒後、二人は遅川に対してさらに嫌悪と憎悪の眼差しを向けて...  「——何ですかソレ最低じゃないですか!タバコ吸わない人の前で喫煙してたその人が明らかに悪いのに、それを注意したお兄さんが虐められるなんて酷過ぎますよ!!」  「——おいそこのクソジジイ!!お前クズだな!?自分が良くないことしてたくせにこのお兄さんを攻撃して追い込んで、心を病むまで虐めてたとかクソ過ぎるだろ!?最近の高齢者はマジで自分勝手で性格が歪んだクズばかりなんだな!?特にお前がそうみたいだな!?」  「ひ、ぃ………」  「あんたが仕事辞めてればこのお兄さんが病まずに済んだかもしれないのに!本当に最低の人間ね!」  「死ね、死んじまえ!!お前みたいなクズはこの世から消えちまえ!!」  それはそれは...ぶふっw罵詈雑言の嵐を奴にぶつける始末だ!  「............まい、こ。かいと..................」  「ねえねえ今どんな気持ち?大切な孫たちから忘れられて...今まで自分を慕ってくれた孫二人から蔑視されて、嫌悪され...罵声を浴びせられてしまって、どんな気持ち?ねぇ......くあはははははははははははははっ!?」  「う、ああああああ...。あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ......」  完全に心が折れて、さらには精神障害まで起こしたらしく、発狂しだした。  いや~~、予想以上に効果覿面だったなー。検索魔術で予めこいつのことを調べておいて本当に良かった。お陰でこんな面白いものを見せてもらったのだから。  こいつの孫たちに対する愛情は気持ち悪いくらいに深いものだった。二人が生まれてからはこいつがずっと世話をしていて、甘やかして育ててきたらしい。  そんな大切に育ててきた孫から忘れられて、ここまで非難されて...さぞ心は地獄に落ちたことだろうなァ!  狙い通り、奴を地獄に突き落としてやったぜ...!まずは心と精神を徹底的に壊すことに成功した。  もちろんこの後、物理的な苦痛をもって地獄の苦しみを与えてやらなきゃ、俺の気が済まない!  まぁ十分面白いモン見せてくれたし、あとはちゃちゃっと甚振って終わらせよう。  「君らは少し眠れ...。お役目ご苦労。後は俺だけで愉しませてもらうからさ――」    そこからは...これまで通りの、復讐拷問コースを執行した。  遅川たけしという存在を完膚なきまで踏みにじって、尊厳を汚しまくって、甚振って、苦しめて、思いつく限りの残虐極まる行為を施した。  最初は断末魔の叫びを上げていた遅川だったが、時間が経つにつれて声が枯れて無くなっていき、最後は植物人間みたいに何もリアクションしなくなった。  心が完全に死んだ証拠だ...!  「俺をあんな理不尽な目に遭わせておいて、自分だけが幸せな老後人生を送ろうとしてんじゃねーぞ?最期くらいは最悪な悪夢を見て、家族に裏切られて、絶望の底に落ちて死ねよ。じゃあな。死んだ後も地獄に落ちろ...!」  そう告げて遅川たけしを木端微塵に破壊して、復讐を完了した...!    「はっは~~!我ながらこうも痛快な復讐方法を思いついたもんだぁ!やっぱ家族とかがいた時の方が面白い復讐ができるな。大切なものをも理不尽に奪われるのは...絶望以外の何物でもねーからな...」  しばらく復讐完遂の余韻に浸ったところで、俺は遅川の家を出た。ガキ二人はそのままにしておいた。どうでもいい存在だし。殺したいとも思ってねーし。    「じゃあ...(社会人時代の)最後の標的のところへ行こうかぁ」  すっかり暗くなった空を仰いで、次の目的地へ向かった――。
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