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――――――  とある小説のとある人物のセリフで、こんなセリフがある。 『人殺しは癖になる』   その言葉の意味は、一度殺人によって問題の解決を図った者は、次なる問題が発生した場合、やはり同じように殺人によって状況を打破しようと する必要のない殺人を、選択肢の一つとして考えている...というものらしい。  また、一度人を殺した人間が殺人の嗜好に目覚め、己の欲求を満たすために犯行を繰り返すようになる...という解釈もあるらしい。  殺人を癖にする者は、このどちらかを動機にしていると言って良いだろう。  しかし稀に、その両方を動機に殺人を実行する者もいるらしい...。 ――――――  移動したところにヤニカスどもがまたいたから、その場で全員殺す。仲間を殺されて俺にキレてくる同じヤニカスどもや人間のクズどもも殺す。  また移動した先に、今度は俺の横断歩行を妨げた車が現れたから、そこからクソ運転手を引きずり出して虐殺した。  そしてさらに移動した先に、騒音をまき散らすバイクやカーが現れたからそれらを運転手ごと破壊した。    それらをひたすら繰り返す、繰り返していく……。  外を出歩いてから1時間しないうちに、俺は数百人ものゴミクズどもを見せしめに処刑していたようだ。  大阪の…一つの市だけでもこんな数ものモラルに欠けた人間、周りの人に平気で迷惑かける人間、マナーなど一つも守ろうとしない人間がいるとはな。  やっぱり俺の見立ては間違ってなかった。外に出たらモラルに欠けてる自己中なゴミクズとすぐに遭遇してしまう。  何故、どいつもこいつもああいった害悪どもをどうにかしようとしない?あんな奴らが蔓延ってしまってるこの世の中を良い方へ変えようとは思わないのか?  そして何故…モラルが欠けてる自己中どもは、歩きタバコや路上喫煙、歩行者たちの優先を無視したマナー違反運転といった害悪行為を平然と行えるのか。  お前らのその下らない自己中さがどれだけ俺に不快さと害をもたらしてるのか分からねーのか?クソどもが…っ  まぁどうせ?ああいった人間のゴミクズどもは所詮、自分の“快”のことしか考えてねーんだろうな。そんなことはとうの昔に分かってた。  分かってたが…やっぱり許せない、納得出来るわけがない。  俺よりも勝手やって迷惑かけてるクズを見るのは凄く不快で苛つくんだよ!  だから殺す。まずはヤニカスや交通ルール・マナーを違反する運転手どもを殺しまくって、自分が住む地域の浄化活動を成す!!  「ふぅ...。いやーけっこう“粛清”したなー。けっこう人減ったか?というか市内ほぼ一周したかも」  気が付くと自宅周辺の道路に戻って来ていた。目で見える限りは、俺が害認定している人種はもういなくなってる。見せしめが効いたみたいだ。  「んー、そろそろか?」  けど、まだ用件は終わっていない。そろそろ来る頃と思うが...おっ、聞こえてきたぞ......サイレンの音が、いくつも。  しばらくしてようやく公僕ども(警察)が到着した。あちこちで殺しをやったもんだから今頃は色んなところにパトカーが来ている頃か。  今来たパトカーが数台、俺を囲むように停止して警官と刑事が十人以上出てくる。中にははじめから銃を向けてくる奴もいた。  「ん......?おやおや、少し前に見た顔が混ざってるやんけ」  「杉山、友聖...!!」  俺を連行しようとした中年刑事とその後輩刑事が険しい顔で俺の前に立っている。  「あちこちで起こっている無差別殺人事件、あれは全てお前の仕業か?」  「ああ。殺したのは全部俺や。」  「いったい、何のつもりで人を大量に殺してるんや!?悪質なテロのつもりか!?」  「は?何でそんなこと答えなきゃならんわけ?まぁあえて答えるとすれば......これは別に無差別殺人でもテロでもねーぞ?俺は殺すべき人間をきちんと選んで殺して回ってたんやから」  「何...!?」  「指定した喫煙所外…特に禁煙区域で路上喫煙したり歩きタバコをしているヤニカスども。歩行者やチャリの横断を遮って通行してくる交通マナー違反者ども。騒音を出して通行しやがるバイクやスポーツカーとかのクソガイジどもなんかも、俺が殺すと決めてる連中や。  あいつらは俺にとっては害と不快感をもたらす害虫や!だからまずはこの地域からそいつらを“粛清”して回っている最中ってこと!理解できた?」  少し熱を込めてなるべく全員の警察どもに聞こえるように俺の行動詳細を説明してやった。しかし説明しても奴らの顔は、こいつ何言ってんだって表情をしてるものばかりだった。  「おい......そんな理由で人を大勢殺したんか...?」  「要するにお前は、自分が嫌だと思うことをしている人らを...気に入らないことをしている人らを問答無用で殺してると言いたいんか」  「おーそうそう!けど“そんな理由”って...。ハァ、やっぱりこの考えを理解できる人間はそうはおらへんかぁ...まぁ分かってたけど。お前ら小物如きに理解してもらおうとも思ってへんし?」  以前会った二人の刑事と向き合って俺は対話に乗ってやる。  「お前ら公僕や有象無象どもにとっては“そんな理由”なんやろうけど、俺にとってはそれだけ許されないことだって、分からんかなぁ。  まぁとにかく、今の俺は人を容易に殺せる力を手にした。本気を出せばお前ら警察にもバレないくらいの隠蔽もできるようにもなった!  だから俺はこうして行動を起こした!」  またも熱が入りベラベラ喋ってしまった。今は気分が良いし、もう少しお喋りしても良いか。中年刑事が再び話しかけてくる。合間に警官どもが俺を捕らえようと網や警棒、銃を構え出している。  「何で今になってお前は大々的に殺人を犯してるんや?数日前からお前は学校のクラスメイトやった人らとかつて勤めていた会社の同僚どもを殺していたそうだが、ほとんど証拠を残さずに、目撃者すら残さずにしていたな?何でそんなことを?」  「は?んなもん決まってるやろ、お前らみたいな偽善組織どもの邪魔を受けないようにする為や。復讐対象を護衛とかされたら面倒やろうからな(まぁ普通に殺せるけど)」  「そうか.........行け」  中年刑事が手を伸ばした直後、警官が一斉に俺を捕縛しにかかった。捕獲網が上から降ってくると同時に真正面から何か発砲してきた...あれは鉛玉じゃねぇな、大きめの...もち?トリモチ弾か!  べチャリと全身にトリモチがくっつくと同時に網が被さってきて完全に動きを封じられる。なるほど、これなら完全に身動きができなくなるわな。あとは――  ――ドンッ  ああやっぱり、麻酔弾か。ハハハ、まるで猛獣扱いやな。これだけされれば捕縛は不可避やろうな.........普通の人間ならな――  “麻酔無効”――覚醒。 炎魔術――“マグマ溶解” 風魔術――“斬撃”  僅か数秒で、完璧と思われた捕縛があっさり対処されたことに、全員があり得ないものを見る目をして俺を凝視していた。  「ぐ......気ぃつけや!!この男は何か得体の知れない力を使ってくるで!俺らも以前その力に当てられたからな!」  そう警告を発したものの、今ので決めるつもりでいたからか、警官どもはただ困惑と狼狽するばかりだ。  「で...?こうして俺を捕らえるってことは、お前らは俺の“敵”ってことで良いゆうわけやな...」  ゆらりと身を揺らしながら伸ばした手から魔力を込める。そのまま相手の返答を聞く間もなく魔術を放った!  “錬成”地面よ槍と化せ――  ―――グサササササッ!!  一瞬だった。警察どもが立っていた地面が鋭利な槍状の刃物に変化して、そのまま奴らを全員串刺しにした。  「な...な......」  「そ、んな......」  唯一あの刑事二人はあえて残しておいた。こいつらには宣伝役になってもらう為だ。  「さって、ここに居座られては生活の邪魔になるから、お前らには俺の住所に関する記憶を失くしてもらおう。あとさっき俺が言った粛清内容について宣伝して回ること。じゃあな、無能な公僕ども、“元いた場所へ帰れ”――」  ――パチンッ  そしてまた俺の前からすごすごと消えて行く刑事らを見送ってから死体の処理を済まして、家に帰った。
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