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グレスはそう言った。
「交流会……ですか?」
「端的に言えばそうだな。内容はお前ら次第だ。班ごとに好きに決めてもらって構わない」
つまるところ、班内自由行動ということだろう。そうアリエスは整理した。
Sクラスは男子17人と女子19人、合計36人のクラス構成だ。
グレスは数秒黙ったのちに、4人班を作るように言った。
アリエスは誘われたらそこに行こう、と周りに流されることを決めた――
――のだが。
「アリエスさん、私の班入ってくださいっ!」
「いやいや、俺たちの班に入りたがってるに決まってる!」
「じゃあその間を取って私たちの班に入ることでいいですね?」
「あ、どうぞどうぞー」
『とはさせないからな!?』
……全員が同じ思考らしく、彼女の取り合いが勃発した。
自分よりも強いアリエスと近づいてあわよくば、的なことも見据えているのだろう。ここで失うのは一つの大きな財産をどぶに捨てるのと同義だ。
争いの火種であるアリエス自身は自分の席の周りで言い争いをしないでほしいと思うばかりだが。
「……これは鼬ごっこですね」
「そうだな……なら、最終手段だ!」
全員拳を握りだし、今から乱闘が起きるんじゃないか、と思ったアリエスは静止しようと勢いよく席から立ち上がろうとした。だが、次の一言でそれが杞憂と気づく。
『最初はグー!じゃんけん……ポン!』
「心配損じゃん……」
じゃんけんするのにこんな熱気と殺気を混じらせて放つとは思わない、と心の中で呟く。
アリエスは小さくため息を吐き、勝者が決まるまでの間ぼーっとすることにした。
「やっっったあああああああぁぁあぁっ!!!」
「え、何事っ!?」
意識を半分手放していたアリエスの耳に突如爆音が走る。
「今回は私たちの班に入ってくださりますか?アリエス様」
「う、うん……」
状況は結局よくわからないまま、アリエスは班に入った。
最後の勝負で果てしない心理戦が起きたことをアリエスが知ることはない。
「……改めて。それじゃあ班内交流、開始!」
グレスの声で周りの班は一挙に話し始めた。
「それじゃあまず自己紹介しとこうか。
私は知っての通り、アリエス・ステラ。趣味は……料理とか、かな……」
「あたしはウーラ・ノーティ。筆記試験だけは大っ嫌いだから……よろしくね?」
「いや、まずは自分でやって?」
私を見られても困るよ、と苦笑しながらアリエスは言う。
「僕はシャルス・モルデリカ。こんな身なり口調でも一応女子だから、よろしく」
「私はエルメア・ロスティアです。一応アリエスさんの親戚に近しい存在ではありますね」
「え、多分あったことないよね?」
「いとこの兄弟みたいな関係なのでご存じなくて当然ですね。まぁそもそも接点を取ろうとしてませんでしたし」
「……私の親が脳筋だから、ごめんね」
アリエスは頭を下げる。
彼女の親は人と関係を築くよりも能力を向上させることの方が大切という方針で子育てをする親だった。
そのおかげで今のような歴代を見ても類を見ないほどの強さを手に入れた、のだが、その反面両親の方針のせいで友達は高等学校に入るまでは0人という悲惨なプロフィールを持っている。
「……交流会と言っても、何するの?」
シャルスがそう3人に問いかけるも誰一人として口を開くことはなかった。
アリエスに至っては交流会なんてもの、社交界に出たことがない時点でもう知ったものではない。
「周りの皆様はただ談義をしてるだけですね……」
「……あ。あたしいいこと思いついた」
「おもしそうじゃなかったら僕含め全員でブーイングするからね?」
「え、ちょっと待って。急にプレッシャーを吹っ掛けないで!?
……アリエスの強さの秘訣、教えてもらうのってどう?」
「私は賛成ですね。シャルスさんは?」
「シャルス、でいいよ。私も別にいいよ。面白そうだし」
「じゃあ洗いざらいはいてもらおうかな?……ア、リ、エ、ス、さん?」
「えっと……私に拒否権は」
「「「ないです」」」
「……私一応主席なんだけどなぁ」
自分の扱いに不整合な感覚を覚えるアリエス。
アリエスは三人の目を見る。その目は獲物を絶対に狩りとらんとする目だった、
諦めて洗いざらい話すことにしたアリエスであった。
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