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俺、けっこう初対面の相手って得意だな。
子供達のされるがままになっていると、俺を助けてくれた村人の一人が俺を呼びに来た。
『すっかり元気になったようだね。あんたにお客さんが来てるよ』
よく分からず見上げてると、一緒にご飯を食べた子供が俺の手を引っ張った。
『お客さんだって』
遊びすぎたかな?
仕事か何か手伝えって事か。
昼に寝かされていた建物に戻ると(どうやらここが村長の住む建物らしい)数人の村人が待っていた。
子供は俺の手を離し、料理を作ってくれた女性に飛びついた。
『お母さん、ただいま』
『お兄さんに迷惑かけなかった?』
『いっぱい遊んだよ』
村人は数人いたけど、みんな正月に集まる親戚のような雰囲気で、思い思いの場所に座ってくつろいでいる。
だが、その中に明らかに浮いた存在の男が一人混ざっていた。多分俺と同じくらいの妙な格好だ。
おしゃれ眼鏡に明るすぎない茶色の髪。白いシャツにネクタイを締め、グレーのパンツスタイルに黒い革の靴。
それに革の黒いバッグはA4の書類が入る大きさだ。
持っているジャケットこそ中世ヨーロッパのような襟付きのマントだったけど、それ以外は営業の若いにいちゃんといっても過言ではない。
ネクタイの柄は……杖?
その男は俺を見て立ちあがると、にっこりと笑って俺にカードを差し出した。
カードもとい名刺だった。
「はじめまして。わたくし如月隼人と申します。またの名をハルバート、ハルでも隼人でも如月さんでも、好きなように呼んでください」
とその若い男は流ちょうな日本語で言った。
「日本人!?」
俺が驚いていると、奴、如月隼人またの名をハルバートは
「まあ取り合えず座ってください」
と椅子を引いて俺に座るように促した。
名刺を受取り、呆然と椅子に座る。
あれ……ここ、別の星でもなんでもなく日本なのか?山奥で映画のロケとか。
「映画関係者ですか?」
「いえ。名刺にも書いてある通り、私はこの国の魔法関連部署に勤めるしがないサラリーマンです」
と如月隼人は言った。
俺は名刺を見た。
『ラキ王国 魔法関連部
営業主任 如月隼人 (ハルバート)』
確かにそう印されている。漢字とカタカナで。あと、何か読めない文字も。
その下に電話番号らしき数字。
何かの冗談かな?
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