Encounter

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放課後、俺は委員会の仕事を終えると教室に戻った。今日はやけにやることが多く、仕事が長引いてしまった。時計を見るともうすぐ6時、完全下校時刻だった。どうりで教室に誰もいない訳だ。 俺は荷物をまとめると教室を出る。ふう。これでやっと帰れる。 玄関は北校舎の1階。ここは南校舎の3階だから玄関まではだいぶ遠い。たくさんある階段をだらだらと降りる。 「キャーーッ!!」 不意に下の階から耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。 何だ? 俺は急いで階段を駆け下りる。2階には誰もいない。ということは1階か。足がもつれそうになりながら何とか1階までたどり着く。するとそこでは、一人の女子生徒が倒れていた。 「おい、大丈夫か!怪我は?」 俺は彼女に手を貸し起き上がらせる。幸い大きな怪我はないみたいだ。 「すみません。もう大丈夫です。でも、誰かに押されたみたいで……」 その時、ちらりと人影が見えた。 女子。長い黒髪を振り乱しながら、慌てた様子で渡り廊下を走っている。 「もしかして、あいつか?」 「……そうです!」 その瞬間、俺は全速力で彼女の後を追った。 「おい待て!」 声をかけたところで彼女は止まらない。 「逃げるな!」 俺は必死に彼女を追いかける。くそ!速いな…… だが段々とスピードが落ちてくる。スタミナ切れのようだ。 玄関が見えてきたところでようやく追いつく。 「おい!」 俺は彼女の肩を掴んで振り向かせる。雪のように真っ白な肌に、目の上でぱっつんと切り揃えられた前髪、桜色の小さな唇。怯えた瞳がこちらを見つめた。 「ごめんなさい!」 彼女は突然叫んだ。俺は思わず一歩引き下がる。 「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい……」 今にも泣き出しそうな声でそう繰り返すと、彼女はその場に崩れ落ちた。
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