Encounter

6/8
前へ
/323ページ
次へ
「え?ち、ちょっ、おい!」 は?失神した?謝り出したと思ったら、急に? 色々なことが一気に起こり、理解が追いつかない。とりあえず俺はその場にしゃがみ込むと、彼女の体を軽く揺さぶり声をかける。 「おーい、大丈夫かー」 返事はない。完全に意識を失っているようだ。ええと、どうしようか。いつ意識が戻るかわからないし、保健室に運ぶか。俺はそう思い彼女の体を抱き上げた。 パタッ 何かが落ちたような音がする。学生証か。胸ポケットにでも入っていたのだろう。俺は一旦彼女を下ろすと、学生証を拾いこっそり中を開いてみる。 「七瀬琴乃(ななせことの)、か」 聞き覚えの無い名前だ。 俺は再び彼女を抱えると、保健室へ向かった。扉を開け中に入るが養護教諭はいないようだ。とりあえずベッドに寝かせ、そばに置いてあった椅子に腰掛けて待つことにした。 改めて彼女をまじまじと見る。駒鐘高校2年D組、七瀬琴乃。学生証にはそう書かれていた。同学年だが、俺は彼女と面識はない。 それにしても、どうして七瀬はあの女子を階段から突き落としたりなんてしたんだ?こんなか弱そうな奴がそんなことするなんて思えないのに… ふと、スカートのポケットからなにか黒いものがはみ出しているのに気付く。何だ? 紙。俺は彼女に気づかれないよう、そっとそれを出してみる。封筒だ。まさかこれって…… 俺は震える手で封筒を開けた。
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加