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「よかった……でも、私のしたことに変わりはないし……それに、このままじゃ私は殺される……『死神』に殺される………!」
七瀬は泣きじゃくり、パニックに陥る。
「でも、まだ時間はあるだろ。それまでに何とかすればいい」
俺はどうにか彼女をなだめようとする。
「何とかなんてなるわけない!今までの『道化師』はみんな死んでる。ついこの間だって女の子が一人死んだって……。もうどうしようもない。私は『死神』に殺されるしか……」
「百合園葵は俺にとって大切な人だった。彼女は俺の目の前で死んだ」
「え………」
「俺は何も出来なかった。百合園が死ぬのを見ているしかなかった。そんなのはもう嫌なんだ。だから俺が止める。『死神』を見つけ出す。こんなことがあっていい訳が無い。奴を絶対に許さない。だから、お前も協力してくれないか」
俺は七瀬の目をじっと見つめた。
「………本気なの?本気で『死神』を見つけられると思ってるの?」
「見つけられるかどうかじゃない。見つけるんだ」
俺はきっぱりと言った。
「期限内に『死神』を捕まえられれば、お前は人を殺す必要も、『死神』に殺される必要も無くなる。悪い話じゃないだろ。ただ、無理強いする気は無い。お前が断るなら、俺は一人でも……」
「わかった。やる。このまま大人しく殺されるなんて嫌。私は君に賭ける」
七瀬は俺の目を見て、はっきりとそう言った。
「それじゃあ、決まりだな」
「うん」
茜色に染まった7月の空に、俺たちは健闘を誓った。
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