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Sacrifice
日曜の昼下がり。最近SNS映えすると人気のパンケーキ店には、流行りのK-POPアイドルの新曲が流れていた。辺りを見回すと、あちらでもこちらでも若い女性が料理の写真を撮っている。ありふれた光景だ。そしてそれは俺の目の前にいる彼女も同じようだった。
「見て見て矢神くん!とっても美味しそう!」
そう目を輝かせながら、百合園葵はスマートフォンでパシャパシャとパンケーキの写真を撮っていた。
「美味そうだと思うなら写真なんか撮ってないでさっさと食えよ。アイス溶けるぞ」
「今時写真撮らないほうがおかしいの。矢神くんそういうところ、乙女心わからないよねー」
「どうせただSNSにアップして自慢したいだけだろ」
「もー、そんなことばっかり言ってると彼女できないぞ!」
「余計なお世話だ!」
軽口を叩きながらも、俺は内心ぎくりとしていた。
そう。休日に2人で食事をしているからといって、俺たちは決して付き合っている訳ではないのだ。だが俺は百合園のことが好きだった。そして今日、俺は彼女に告白するつもりだ。
そんなこと知るよしもない百合園はようやく写真を撮り終えると、パンケーキを頬張り、にっこりと笑みを浮かべる。口紅に彩られた形の良い唇がつやつやと光り、愛らしい顔がより一層魅力的に映る。俺はそのあまりの美しさに見とれてしまった。
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