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「ねえ、あの女の人とかどうかな?」
七瀬はだるそうにテーブルを拭いている女性を指さして言った。ぐりんぐりんに巻いた長い金髪に派手なメイク。あくびをしながら手を動かす、いかにもやる気のなさそうなギャルだ。彼女ならいけるかも。
「すみませーん」
「は〜い」
俺が呼びかけると、彼女は間延びした声で返事をし、だらだらとこちらに歩いてきた。
「あのー、この前の日曜日、このお店にアルバイトの面接に来た高校生がいますよね。どんな人だったか覚えてませんか?」
「あ〜、担当じゃないんでちょっとわかんないですね〜すいませ~ん」
彼女はそう言うとすぐに立ち去ろうとした。
「じゃあ、調べてもらうことはできませんか?履歴書とか、何か残ってるもの無いですかね?」
「……お客さん、どうしてそんなこと知りたいんです?」
「え、あ、いや……」
まずい、あやしまれたか。
「あっ、あの!」
七瀬は立ち上がり、彼女にドーナツの紙袋を見せた。
「これ、あのドーナツです。大人気でいつも売り切れちゃうお店の。教えてくれたら、あなたにあげます」
どうだ……
「えっまじ?うちドーナツ大好きなんだよ!!面接の記録、奥で確認してくるからちょっと待ってて」
「「え……」」
思わず2人同時に声を出してしまった。
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