殺人中毒

Encounter

『死神』事件。
この4月から駒鐘(こまがね)高校を騒がせている連続殺人事件の俗称だ。

1人目の被害者は3年C組の田中(たなか)彰(あきら)。4月にバイクで事故を起こし、死亡。校内でも有名な不良生徒で無免許運転だったため、最初は事件性は疑われず、交通事故として処理された。

2人目の被害者は1年B組の水野菜々子(みずのななこ)。1年生にして生徒会役員を務める優等生だったらしい。5月、教室のベランダから落ちた植木鉢が当たり、頭を強く打って死亡。こちらも一旦は事故として処理された。

3人目は森本(もりもと)一花(いちか)。俺や百合園と同じ2年A組の生徒だ。百合園とも仲が良く、いっしょにいるところをよく見かけた。6月、塾の帰り道で何者かに襲われ、ナイフで滅多刺しにされて死亡。遺体は原型がわからないほどぐちゃぐちゃで、それは悲惨な光景だったらしい。

『死神』の存在が知れ渡ったのは、この森本の事件の数日後だ。死んだ3人全員が死ぬ前に『死神』を名乗る人物から手紙を受け取っていた、という情報がSNSで流れたことがきっかけだった。

手紙の内容は、手紙が送られてきた人物＝『道化師』は13日以内に人を殺さなくてはいけない。このルールを破ると『道化師』は『死神』によって殺される、というものだ。

このことにより、最初は事故死だと思われていた田中、水野も実は他殺なんじゃないか、3人は手紙のルールを破ったから『死神』に殺されたんじゃないか、という噂が生徒たちの間に広まり恐れられるようになった。