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そうこうしているうちに夜が深まり、あっという間に午後10時。
ダブルベッドに横たわる私の隣には七海ちゃんがいる。
「明日はなんのお勉強して、なにして遊ぼうかな?、早苗さんはなにかしたいことある?」
なにかしたいことと言われても、正直なところ、なにをしたら良いのか、どうしたら良いのか、この世界についても謎が増えるばかりで、どう動くのが正解なのか全然わからないでいる。
「まあ、ここには私と早苗さんの二人だけだから、遅刻しても怒ってくる先生も居ないし、寝坊し放題、遊び放題、自由気ままなスクールライフ、とにかく今は、危険な状態の早苗さんを早く、この世界から、、、」
言いかけですやすやと眠りについてしまった七海ちゃん。
こちらで目覚めた時にも言ってたけど、私が危険な状態とはどういう事なんだろう?、そもそもどうして私はこんな不思議な世界に来てしまったのか?、私は今日、朝起きて出勤してたはず、、、
「くっ、、、ぃ、、、ん、、、」
そこまで考えて私はまた胸が痛みだす。
どうやらここに来るまでの事を思い出そうとすると、身体が悲鳴をあげるらしい。
考えようにも、これでは全然脳が働かない、今日のところはゆっくり休む事にしよう。
「おやすみなさい」
それから私達は毎日、この二人だけでは広すぎる学校で勉強したり、遊んだり、ごはんを作って過ごしていた。
お昼、七海ちゃんが屋上でごはんが食べたいと言うので、食堂でごはんを作って屋上にやってきた。
「屋上でごはん最高!こんなこと絶対に普通の学校だったら出来ないからねー、アニメとかだと普通に屋上で昼食シーンとかあるけど、現実だとそもそも屋上なんて鍵かかってて入れないしね」
「そうだね、屋上でごはんなんて私もしたことないよ」
そんな話を七海ちゃんとしながら、七海ちゃんの顔を見ると少し寂しそうな顔をしているように思えたので「どうかしたの?」と聞いてみる。
「早苗さんの身体の事なんだけどね、だいぶ良くなってきてるみたいだよ!♪だから、、、この世界の役目も、、、私の役目も、、、もう終りが近付いてるなって思って、、、」
私の身体が良くなるのと、この世界はどう関係しているのだろうか?。
「ダメだよね、せっかく早苗さんが元気になってきてるのに!。そうだ早苗さん、今日はお祝いしましょ!♪、私が早苗さんの食べたいものなんでも作ってあげる!♪と言っても、私達二人が食べた事のあるものでだけどね」
「ねえ七海ちゃん、私の身体が良くなると、この世界はどうにかなっちゃうの?七海ちゃんはどうなるの?」
私は疑問に思ったことを聞いてみるが「早苗さんが元気になれば私もハッピーになれます!♪」と言って詳しくは教えてくれなかった。
「出来た、クリームシチュー!♪。んでも、ホントにこんなので良かったの?早苗さん?」
その日の夜、私達はクリームシチューを一緒に作った。
「こんなのなんて、クリームシチューは立派なご馳走だよ七海ちゃん」
二人で席についていただきますをして私と七海はクリームシチューを。
「クリームシチューはごはんにかけて混ぜて食べる!♪お上品じゃなくても良いのだー!!。早苗さんもシチューごはんに混ぜるでしょ!記憶に触れたから知ってる!おそろおそろ!♪」
ごはんにかけるなんて、って思う人もいるかも知れないけど。
「私は親がそうしてたから、クリームシチューってこうやって食べるものだと思ってたんだけど、あんなに賛否別れる事だったなんて知った時は驚いたよ」
シチューについて話したり、「ペペロンチーノ唐辛子抜き」なんておかしな注文をする七海ちゃんの友達の話をしたりして、私達は食事を終えて寝室に行く。
ベッドの中、私の隣にいる七海ちゃんの顔は少し陰っているように見えた。
「ねえ早苗さん、私の話を聞いてくれる?」
マスク越しにも分かる、真剣な表情で、七海ちゃんは自分について話し出す。
「私ね、見ていてちょっと危なっかしくて、でもその人を見ると元気が出て、今日も1日頑張ろうって思えてくる、憧れの人がいたの。名前は知らない、向こうは社会人で、私は学生で、接点と言えば、通学、通勤の道が途中まで一緒ってだけ。だから言ってしまえばそれだけの他人なんだけどね、私はその人が毎日頑張って出勤してる姿に、本当に勇気をもらってた」
暖かい笑みを浮かべながら七海ちゃんは言葉を続ける。
「さて早苗さん、その社会人の人とは誰の事でしょ!?」
とくすりと笑って問いかけて来るが、私に分かるわけはなく「名前もわからないんじゃわからないよね」なんて言うと「朴念仁だね早苗さん」と言われてしまった。
そして「おやすみなさい」と言ってお互い眠りにつく。
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